自己制御は「意志の強さ」だけでは決まらない
──他者と良好な関係性を築いていく上では、自分の言動をうまく制御する必要があると書かれていました。これは、どのようなことでしょうか。
唐沢:自己制御はある種の「我慢」です。衝動をおさえたり、自分を律したりすることです。これは、人間関係に限らず「甘いものを控える」「夜更かしをやめる」といった日常的な場面にも当てはまります。
心理学では、こうした自己制御には一定の「心のエネルギー」が必要だと考えられています。制御資源とも呼ばれますが、要するに我慢にはコストがかかるということです。そして、その資源は無限ではありません。つまり、我慢を続ければ続けるほど人は疲弊していくのです。
仕事や家庭で余裕がなく、すでに強いストレスを抱えているとき、さらに別の場面で自己制御を求められると、大きな負担がかかります。個人差はありますが、生活にゆとりがなくなるほど、感情や言動のコントロールは難しくなります。
自己制御は意志の強さだけでどうにかなるものではありません。心の余力がどれだけ残っているかという「コンディション」が大きく影響します。つまり、自己制御をするためには、それができる環境を自ら整備しておく必要があります。
周りからの評価が「気が利く」行為を決める
──「気が利く」という評価は、本人の行為だけで完結するものではなく、周囲がどう受け取るかによって成立するとあります。
唐沢:たとえば、自分に好意を持っている人に何かしたときには、その行為は好ましいものとして受け取られます。
ところが、同様のことを、自分に対して悪い感情を抱いている人にしたら、どうなるでしょうか。「媚を売っているのではないか」「下心があるのではないか」など、邪推されてしまうかもしれません。