自己高揚動機という「落とし穴」

──承認欲求を満たすための不適切な配慮が生じてしまう原因として、「自己高揚動機」を挙げていました。

唐沢:自己高揚動機とは、人が自分自身をできるだけ良く評価したい、価値ある存在だと感じていたいと願う心理的な欲求のことです。

 自己高揚動機は、努力して成果を出そうとしたり、人の役に立とうとしたりする原動力にもなるため、それ自体は決して悪いものではありません。

 ただし、この動機が過剰になってしまうと、それ自体が目的化してしまうという問題があります。本来は他者のために行うはずの行動が、いつの間にか「自分が良い人だと感じるため」という動機にすり替わってしまう。これが、自己高揚動機の落とし穴です。

 誰かに対して支援し、それがうまくいったとき「自分はいいことをした」「相手の役に立てた」と前向きに評価できるのは自然なことです。また、自分自身を「良い人だ」と思う感覚は、ほとんどの人にとって快感です。けれども、知らず知らずのうちに、その感覚に依存してしまい「自分のため」の他者への支援をすることがくせになってしまう恐れがあります。

──自己高揚動機の落とし穴にはまってしまっていることに気付くためのコツがありましたら教えてください。

唐沢:一度立ち止まって自分に注意を向けること、周囲からのフィードバックに耳を傾けること。この2つがお勧めです。

 友人との何気ない会話の中で「それはちょっと違うんじゃない?」と指摘されることで、自分の振る舞いに疑問や違和感を持つきっかけが生まれます。

 自身の考えや行動に疑問や違和感を持てるか否かが、落とし穴からはい出るためには必要不可欠です。それがなければ、人は何度も同じ過ちを繰り返します。

 率直な意見を交わせる人間関係や環境を持つことが、自分自身を客観視し、行動を見直すための助けとなります。