「産業界重視」から「生活者ファースト」へ
消費者庁設置直前の2008年の国民生活審議会では、「消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて」という意見書*1が出され、「生活者」は「消費者」だけでは説明しきれない個々人の側面を補完する用語として使用されています。
*1:消費者・生活者を主役とした行政への転換に向けて(意見)
敗戦からの戦後復興期・高度成長期には国民のニーズがわかりやすかったので、大企業中心の経済政策がうまくいっていました。テレビを作ればテレビが売れるし、車を作れば車が売れるわけですから、経済政策はいかに効率よくモノを作るかというところに帰着していきます。
消費者に多少の損害があったとしても、産業界の都合を優先することで経済全体が成長し、結果的に消費者も経済成長の恩恵を受けることができていたため、消費者軽視が正当化されるという構造でした。
もちろん、森永ヒ素ミルク事件に代表される深刻な健康被害や、豊田商事事件に代表される凶悪な詐欺被害を正当化することはできませんが、全体として「消費者保護は後回し」という意識があったのは間違いないでしょう。
その時代が一段落し、現代は「消費者がなにを求めているのか」がわからない時代になっています。そうした時代には、生産に力を入れてもそれが必ずしも売れるわけではなく、当然、経済成長にもつながらないので、このような正当化は成り立ちません。
現代は、消費者にとってフェアなマーケットを作り、産業界側が偶発的なニーズをつかむことでしか経済を成長させていくことができない、「複雑性の時代」にあるといえます。
消費者庁の設置は産業界ではなく個人中心の経済構造に転換していくことの決意表明といえますし、中道の「生活者ファースト」にも同じベクトルを感じたので、私個人としては期待感が高かったわけです。
選挙期間中、一部SNSでは「生活者ファーストとは日本人を後回しにするという意味だ」というような誹謗中傷がなされていましたが、「生活者」というフレーズについての経緯を知っていた身としては非常に腹立たしく感じました。