「おそらくは最後になるであろう特別な機会」
その代表作である『真珠の耳飾りの少女』が、今年8月21日から9月27日まで大阪市の大阪中之島美術館で開催される「フェルメール展」で14年ぶりに来日することが発表された。
フェルメールは寡作で、現存する作品数は40点に届かない。中でも『真珠の耳飾りの少女』は、少女の濡れたような唇や耳元の真珠の輝きなど随所に画家の卓越した光の表現が感じ取れる傑作中の傑作だ。今やオランダを代表する名品でもあり、収蔵館のマウリッツハイス美術館は原則館外への貸し出しはしない方針で、同館のゴッセリンク館長は今回の来日に当たり、「日本の皆さまに彼女を送り届けられる、おそらくは最後になるであろう特別な機会」というコメントを寄せている。
この作品は17世紀のオランダでよく描かれたトローニー(人物の様々な表情を描写する習作)の一種で、特定の誰かを描いた肖像画ではない。しかし、振り向いた少女の無防備で初々しい表情は、あたかも少女がすぐそこに存在するかのようにリアルで、長い時間を超えて見る者の心を掴む。
真珠の耳飾りの少女
フェルメールはウルトラマリンブルーを黄色とセットで使っていた。『真珠の耳飾りの少女』では、当時の流行だったイスラム風のターバンの青と、そこから垂れる房の黄色の対比が目を引く。現代人だと違和感はないが、17世紀のオランダではかなり個性的な組み合わせだったに違いない。とはいえ、よくよく見ると、インド・ベンガル地方原産でマンゴーだけを食べさせた牛の尿から作ったというこの黄色(インディアンイエロー)が、ターバンのやや赤みがかった鮮やかな青を巧みに引き立てていることが分かる。
フェルメールのこの色彩感覚に魅せられたのが、同じオランダ出身のフィンセント・ファン・ゴッホだ。パリに出て色彩理論を学んだ後、既に“古典”だったフェルメールに注目するようになり、後輩の画家ベルナールに「フェルメールという画家を知っているか? この一風変わった画家のパレットは青、レモン黄、パールグレー、黒、白だ」と書き送っている。