戦後最多となる4人もの総理大臣を輩出してきた群馬は、全国屈指の保守王国。その県都で、40代の県外出身女性を市長に選んだ民意とはなんだったのか。

 県内では2025年、桐生市や藤岡市で官製談合事件が相次ぎ、副市長や県議など公職者の逮捕が相次いだ。そんな空気感が漂う中での市長選。

「祖父、父と続いてきた地元弁護士事務所の3代目の男性」と「司法修習でやってきた前橋に県外から移住し、弁護士、県議を経て市長になった女性」とのどちらに有権者は「脱しがらみ」の希望を見出したか。

「昔の政治に戻らない」自民党支持者4割も支持

 2点目は、小川氏が「逃げなかった」という点だ。

 今回の件についての説明が十分だったかについては議論の余地が大いにあるが、小川氏は選挙期間中「対話集会」と銘打って街頭に立ち、市民一人ひとりからの質問を受け、対話をする姿勢を貫いた。

 苛烈なヤジを浴びせられる可能性もある場に出ただけでなく、YouTubeの配信でも質問を受けた。ラブホ問題を起こし、市民の期待を裏切り、出直し選挙に至らしめた点については率直に謝罪を重ねていた。その姿勢を評価した人が多かったのではないか。

 3点目は、「敵を作らず攻撃もしなかった」という点。これは相手候補を支援した山本一太・群馬県知事の責に帰す部分が大きい。

 山本知事は、自らの定例記者会見の場などで、執拗なまでに小川氏をラブホ問題1点で責め立て続けた。発覚直後の定例会見では20分以上ぶっ通しで小川氏の批判演説を開陳した。

 一方の小川氏はそれに対する反論や攻撃、批判をしなかったように思う。有権者の目には「若い女性をいじめる高齢男性」の構図に映り、同情票にもつながったのではないか。

 そもそも世間は、男性政治家のスキャンダルには甘く女性政治家にはことさら厳しい。それへの異議もあっただろう。

 選挙戦最終日の「対話集会」の様子はある意味象徴的だった。

 商店街を練り歩く丸山陣営と鉢合わせとなり、「まーるやま、まーるやま」の大合唱で集会の進行が一時妨げられたが、小川氏は相手陣営のために通路を空けるよう群衆に呼びかけた上「お互い、いい選挙にしましょう」と呼びかけた。

「昔の政治に戻らない」。対話集会での市民の発言が印象に残った。ラブホ狂想曲を経て前橋の人たちが出した答えは、結局それだったのだろう。

 地元・上毛新聞の出口調査で、小川氏が自民党支持者の4割程度にも浸透していたということも、それを物語っているのではないか。