緊迫するイラン情勢、そしてイラクも
トランプ米大統領は28日、イランに対して核兵器に関する交渉を即時に応じるように要求し、「応じない場合には、昨年6月に命じた核開発関連施設への攻撃をはるかに上回る軍事行動に踏み切る」と警告した。米空母「エイブラハム・リンカーン」を中心とする空母打撃群がインド洋に展開している。
「イランを標的とする米軍の作戦が実行される」との警戒が広がる中、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は「イランに対する軍事作戦に自国の領空や領土を使用させない」と主張し、対話による解決を求める姿勢を鮮明にしている。
イランの政情も不安定のままだ。
ロイターは27日「イランの通貨リアルは過去最安値を更新し、25日に発表されたデータによれば、直近のインフレ率は前年比60%に達した」と報じた。
イランの隣国であるイラク情勢も怪しくなっている。
イラク国営通信は24日「昨年11月の選挙でスダニ首相が率いるイスラム教シーア派の『復興開発連合』が単独過半数を得られなかったため、シーア派の政治勢力が協議した結果、マリキ氏を首相候補に決めた」と報じた。
これに対し、トランプ氏は27日「フセイン政権後にイラク政府を8年間率いたマリキ元首相が首相に復帰すれば、イラクへの米国の支援を打ち切る」と発言した。マリキ氏が復権すれば、イラクは再びイラン寄りになると危惧しているからだ。
米国政府はイラクの原油輸出代金の大半を管理しており、生殺与奪の権を握っていると言っても過言ではない。米国との関係悪化でイラク情勢が再び泥沼化するのではないかとの不安が頭をよぎる。
原油価格の動向に大きな影響を与える中東情勢について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。