ドル箱、箱根駅伝の放映権料はいくら?

 メディア露出による広報効果は絶大で、2007年に順天堂大学スポーツ健康科学研究第11号に掲載された「2007年箱根駅伝総合優勝の広報効果の研究」(山田満・著)では、この年に総合優勝を果たした順大は広告費換算で19億4800万円、広報効果はその3倍の58億4688万円に達したと分析している。

 そんな箱根駅伝の放映権料はいくらなのか。

 主催する関東学連は公益法人ではないため、一般には公開されていないが、スポーツライターの酒井政人氏の著書「箱根駅伝は誰のものか『国民的行事』の現在地」(平凡社新書)を再構成した2023年11月のPRESIDENT Onlineの記事には「日本テレビが関東学連に支払う放映権料は複数年契約で数十億円になるようだ」と書かれている。

 他方、箱根駅伝をめぐる巨額マネーの収支が公開されていないことに疑問を投げかける声もある。元毎日新聞論説委員でスポーツジャーナリストの滝口隆司氏は2026年元日付のAll Aboutニュースの記事「箱根駅伝、視聴率30パーセントめぐる『巨額マネー』はどこへ? 大学側が抱く収益構造への不信感」で、数十億円規模ともみられる大会の収支が一般に公開されていない点を問題視している。

2026年の正月にも様々なドラマが生まれた箱根駅伝。将来的にネット配信も?写真は2021年に優勝した駒澤大(写真:アフロ)

 2026年大会から新たなスポンサーカテゴリが新設されるなどしたことを受け、「ビジネスの拡大に伴って、競技の現場からは収益構造の不透明さに不満が漏れている」と指摘する。

 箱根駅伝と同じ学生スポーツでは、春夏の高校野球の甲子園もNHKなどが中継することで大きな注目を集めるが、こちらは明確に日本学生野球憲章が学生野球の商業利用を禁止しており、放映権料を受け取っていない。

 ただし、東大卒の元プロ野球選手で、ソフトバンクの球団幹部を経て現在は桜美林大教授の小林至氏が2020年6月のネットニュース「iza(イザ!)」の記事で、高校野球をスポーツビジネスとしてとらえた場合には「保守的に見積もっても100億円は稼げる」と指摘している。

学生スポーツの商業利用は進むのか

 日本では、箱根駅伝や高校野球などの学生スポーツの露骨な商業利用にはまだ抵抗もあるだろう。しかし米国の大学スポーツを統括する全米大学体育協会(NCAA)の市場規模は8000億円ともいわれ、人気スポーツのアメリカンフットボールやバスケットボールを中心に得た巨額の放映権料は、加盟大学にも分配される。

 スポーツの巨大イベントには主催団体とメディアだけでなく、強化費をつぎ込む出場チームや選手、チームや大会のスポンサー企業など多くのステークホルダーが絡む。

 動画配信企業のスポーツ中継への本格参入によって、放映権料などの「商業的価値」がクローズアップされている。そうした中、伝統メディアのテレビ局が“共存共栄”で盛り上げてきた過去の功績はあるものの、地上波中継が多くのスポーツ中継において窮地へ追いやられていく流れは避けられなくなっている。

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。