大国が主導する「ヤルタ2.0」の現実味
4.国家資本主義競争と資源・エネルギー争奪戦
日本、米国、EU、中国など、多くの国が国家主導の産業政策を強力に推進し、規制や補助金、税制上の優遇措置等を用いて、半導体や蓄電池などの重要分野の保護・育成を進め、戦略的自律性と戦略的不可欠性の確保を図っている。
日本では高市政権の下で、「危機管理投資・成長投資」の下でAI(人工知能)、半導体や資源、エネルギー安全保障、GX(グリーン・トランスフォーメーション)など戦略17分野が指定されて官民連携投資とサプライチェーン強靱化が進められる。
中国は、2026年からの第15次5カ年計画の下で「自立自強」を一段と強め、重要物資の国産化を進めていく。インドや韓国なども含め、多くの国が半導体等の戦略産業において国家資本主義競争を繰り広げていく。
また、資源・エネルギーや関連技術を有する諸国では、輸出管理等の規制強化や資源国との連携強化による資源囲い込みの動きが進むだろう。
米国は自国内での生産を強化するとともに、資源国からの供給確保を進めている。すでに、ウクライナとの鉱物資源協定やコンゴ民主共和国(DRC)との合意により、重要資源への優先的アクセスを得た。日本を含む世界各国が資源・エネルギーのサプライチェーン強靱化に取り組んでいる中、米国は力を背景にした資源囲い込みを今後も進めていくだろう。
5.近づく「ヤルタ2.0」と「頼れない米国」
2025年11月に策定した『国家安全保障戦略』(NSS2025)でトランプ政権は、米国第一の「力による平和」と、西半球での米国の卓越性を主張するトランプ版モンロー主義(ドンロー・ドクトリン)を打ち出すとともに、大国が大きな影響力をもつことを「国際関係における不変の真理」として認めた。
これは、米国の西半球以外の地域への不介入を意味するものではないが、米国の同盟諸国やグローバルサウス諸国の、中小国の利益を無視した、米中ロによる「勢力圏」分割につながるのではないかとの懸念を強めた。
2026年初のベネズエラでの軍事作戦は、トランプ版モンロー主義の下での米国第一の「力による平和」がどういうものかを世界にみせつけた。さらに、トランプ大統領は、デンマーク領グリーンランドの領有にも強い意欲を示し、欧州の同盟諸国との軋轢を生んでいる。
米国は、国益を狭く定義して、国際公共財維持のコスト負担を拒絶し、対外援助も大きく削減して同盟国や被支援国に自立や負担増を求めている。2026年1月7日にトランプ大統領は、米国の利益に反するとして、国連貿易開発会議(UNCTAD)など66の国際機関・枠組みからの脱退(参加・資金拠出の停止)を指示した。こうした行動は、米国の信頼性を低下させ、多くの国に米国依存からの戦略的自律を促している。
他方で中国は、自由貿易や多国間主義の擁護者、米国に代わる支援者として振る舞い、米国の撤退による「空白(真空)」を埋めようとしている。今後、これに引き寄せられるグローバルサウス諸国が増えていくことも想定される。
正月早々のベネズエラ軍事作戦は米国第一の「力による平和」がどういうものかを世界に見せつけた(写真:写真:ロイター/アフロ)