大規模な供給途絶やOPEC減産がなければ26年は…

 米NBCテレビは20日「イスラエルのネタニヤフ首相は今月下旬にトランプ氏と会談する際、イランへの再攻撃計画を説明する」と報じた。米軍が今年6月に損傷を与えた核施設の修復が進み、弾道ミサイルの生産が拡大していることなどが理由だ。

 地政学リスクが目白押しの感があるが、原油価格は60ドルを超えることはなかった。OPECプラスの増産により、有事の際のバッファー(緩衝材)となる世界の余剰生産能力が年初から日量300万バレル以上減少しているのにもかかわらず、原油市場は地政学リスクに反応しなくなっている状況に変わりはない。

 振り返れば、今年1月の原油価格(平均)は1バレル=約75ドルだった。

 3月まで70ドル前後で推移したが、OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国が構成メンバー)が4月に増産を開始すると60ドル近辺まで下落した。   

 6月に入るとイスラエル・米国とイランの間の軍事衝突で原油価格は67ドルに上昇したが、OPECプラスの増産が嫌気されて、10月からは60ドル前後で推移している。

 今年の原油価格は65ドル弱になる見込みだが、来年はさらに下落する可能性が高いだろう。ゴールドマン・サックスは、大規模な供給途絶やOPECプラスの減産がない限り、2026年の原油価格は1バレル=52ドルになると予測している。

 原油安は日本にとって朗報だが、「油断禁物」だ。原油市場の今後の動向について、引き続き高い関心を持って注視すべきだ。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。