米国がベネズエラと戦争する可能性はどこまで?(写真:ロイター/アフロ)
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(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=57ドルから59ドルの間で推移している。週明けの原油価格は57ドル近辺だったが、その後、地政学リスクが意識されて58ドル台半ばまで上昇した。

 まず原油市場を巡る動きを確認してみたい。

 市場の最大の関心はベネズエラを巡る地政学リスクだった。

 米国政府は12月20日「沿岸警備隊がベネズエラを出港した石油タンカーを拿捕した」と発表した。10日にも沖合で大型の石油タンカーを拿捕しており2隻目だ。

 米当局者は21日、ベネズエラ近海の国際水域でタンカー1隻をさらに追跡していることも認めた。米側は拿捕を試みたが、このタンカーは航行を続けたという。

 米国の圧力強化により、ベネズエラの原油輸出は支障をきたし始めている。

 ロイターは22日「出港しないタンカーがここ数日増えており、数百万バレルのベネズエラ産原油が積まれたままの状態になっている」と報じた。ただ、シェブロンは米国政府の許可の下、自社タンカーでベネズエラ産原油を米国に向けて輸送している。

 ロイターは23日「石油タンクが満杯になったため、国営石油企業PDVSAは減産回避を理由に領海内にとどまるタンカーへの原油積み込みを開始した」と報じた。PDVSAはタンカー運航企業に対し、中国へ輸出するよう要請したが、聞き入れられなかった。

 米軍のベネズエラへの地上攻撃も取り沙汰されるようになっている。

 ウォールストリート・ジャーナルは23日「米軍がカリブ海域で特殊作戦航空機などの兵力を増強した」と報じたが、地上攻撃の可能性は低いとの報道もある。

 ロイターは24日「米ホワイトハウスは米軍に対し、少なくとも今後2カ月間はベネズエラ産原油の封鎖に専念するよう命じた」と伝えた。

 予断を許さない状況が続いているが、筆者は「事態は今後、終息に向かう可能性が高いのではないか」と考えている。

 ベネズエラ産原油の輸出(日量約100万バレル)が大幅に減少する事態となれば、米国内のガソリン価格が上昇する可能性が高く、トランプ米大統領にとって数少ない功績(5年ぶりのガソリン安)が台無しになってしまうからだ。

 ロシアの地政学リスクも相変わらずだ。