井上・中谷らの活躍が試金石に

 サウジアラビアのスポーツ興行はまだ、巨額な投資に見合うリターンを実現できていないとの向きもある。日本経済新聞の記事によれば、LIVゴルフは計50億ドルを投じたものの、巨額の赤字が報じられ、欧州から大物選手を相次いで獲得したサッカー国内リーグの平均観客数も1万人に届かないという。こうした状況もあって、ビジネスとして向き合う姿勢は決して甘くないという。

「オイルマネーは潤沢でも、簡単にお金を出すわけではない。ビジネスにはシビアな面もある」(スポーツバックス社員)

 会場のモハメド・アブドゥー・アリーナは2万2000人収容の大会場だが、今回の収容設定は最大2500人。日本の規模では、後楽園ホール(約1500人収容)や東京・大田区総合体育館(約4000人収容)に近く、24年5月の東京ドーム興行で4万3000人を集めた井上選手らの興行では異例といえる。

 日本とサウジアラビア外交関係樹立70周年にあたる25年を締めくくる12月27日の興行を終え、日本人ボクサーの評価はどう変貌するのか。新たなビジネスチャンスは生まれるか。運命のゴングはまもなく鳴る。

田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。