夏の風物詩となっている甲子園。猛暑の影響なので、「7イニング制」の採用が議論されている(写真:スポーツ報知/アフロ)
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 (田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 日本高校野球連盟の検討会議が「7イニング制の採用が望ましい」との最終報告書を提出した。2028年春に開催予定の第100回記念選抜大会を目途とし、猛暑対策が急務の夏の選手権大会については速やかな対応を求めた。

「試合での熱中症リスクの軽減」「選手のけが予防」「指導者、運営関係者の負担軽減」などの採用メリットに対し、「選手の出場機会の減少」などの懸念から、高野連のアンケートでは加盟校の7割が反対を訴えた。

 議論から抜け落ちているのは「トーナメント形式による夏の集中開催」「猛暑下での甲子園開催」という時期、会場、方式の3点に関する是非だ。猛暑対策が待ったなしの状況で、天秤にかけるべきはこれらの点であり、“本丸”の議論を避けた建て前論では消化不良と言わざるを得ない。

炎天下の甲子園で選手の命は守れるのか

「競技の根幹に関わる」

 報道によれば、日本高野連は12月5日の理事会で、7イニング制への移行に慎重な姿勢を崩さず、審議は継続されることになった。とはいえ、1月から監督経験者らでつくる「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」からの最終報告書が7イニング制導入へ“お墨付き”を与えたことは間違いないだろう。

 大変革へ舵を切る必要性に迫られた最大の理由は、近年の夏の猛暑だ。

 甲子園では、大会中に足がけいれんしたり、つったりする球児が出ており、最悪の場合には死に至る熱中症対策は急務となっている。これまでも、2023年夏からは5回終了時に水分補給などで休憩するクーリングタイムを導入し、2024年夏からは、一部の日程で午前と夕方の「2部制」を導入している。だが、小手先の対策では限界にきている。生命に関する重大事案が起きてからでは遅いのだ。