本音の議論から逃げる野球関係者たち
本音の議論から逃げているのは、高校野球の問題だけではない。
プロ野球では12月1日、12球団と日本野球機構(NPB)は1日、クライマックスシリーズ(CS)の開催方式の見直しについて議論した。
こちらも同じく、理想は言うまでもなく、セ、パのレギュラーシーズン優勝チーム同士が日本シリーズで戦うことだ。しかし、CS開催によって、優勝が決まったチーム以外の消化試合が減少するだけでなく、CSそのものも、主催球団は放映権や入場料、グッズ収入などを得ることができる。
さらに言えば、この問題を報じているメディアもCSは、やはり秋のキラー・コンテンツで簡単に試合数は減らしたくないだろう。
「CSはお金になるからやりたい。ただし、デメリットとして2位、3位チームが日本シリーズに出る可能性も排除できない。それでも、CSがあるほうが、自分が応援しているチームが優勝の可能性がなくなったシーズンでも、3位以上になれる可能性があればCSで盛り上がることもできる」という点をもっと強調した上で最善の方式を模索しなければ、上っ面だけの建て前論にしか聞こえない。
CSファイナルステージに関しても、一般的に考えれば、優勝チームが2位とのゲーム差に応じて、日本シリーズ進出に有利なアドバンテージの勝利数を上積みすればいいというのは当然のことになる。
しかし、それでは収益機会が減ってしまう。
日本球界はただでさえ、スター選手のメジャー流出が止まらずにいる。「何とか魅力的なコンテンツとしてCSを盛り上げてお金儲けもしたい」という本音をつまびらかにしてこそ、議論の本質が見えてくる。
田中 充(たなか・みつる) 尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授
1978年京都府生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程を修了。産経新聞社を経て現職。専門はスポーツメディア論。プロ野球や米大リーグ、フィギュアスケートなどを取材し、子どもたちのスポーツ環境に関する報道もライフワーク。著書に「羽生結弦の肖像」(山と渓谷社)、共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)など。