浅井長政の裏切りで追い詰められた豊臣兄弟

 続いて、秀長に課せられたであろうミッションが、「金ヶ崎の退き口」と呼ばれる撤退プロジェクトである。

 勢いに乗る信長は京に上洛して室町幕府の後見人の地位を確立すると、1570(永禄13)年には大軍を率いて、朝倉義景率いる朝倉家に侵攻。秀吉は敦賀で手筒山城を落とすと、続いて金ヶ崎城に向かった。城主の朝倉景恒を相手に開城を促し、見事に成功している。

 ところが、近江の浅井長政が裏切ったために、織田軍は退路を断たれて、状況は一変。織田軍が窮地に陥る中、信長を京都まで退却させるために、最後尾で戦いながら逃げる「殿(しんがり)」を誰かが務めなければならなくなった。

 危険な任務に周囲が尻込みする中で、志願して引き受けたのが秀吉だったという。秀吉からすれば、織田軍のピンチこそ、自分の存在感を示す最大のチャンスだと考えたのだろう。秀吉は最後尾で朝倉勢の攻撃をしのぎながら、無事に織田軍を退却させた。

 当然、秀吉チームにいた秀長も「金ヶ崎の退き口」で奮迅したに違いない。兄をどうサポートしたのか、秀長の見せ場となりそうだ。

 浅井長政は中島歩が、長政の妻で信長の妹・お市の方を宮﨑あおいが演じている。信長からすれば、妹を嫁がせていたために、すっかり油断していたことになるが、長政はなぜ信長を裏切り朝倉についたのか。

 その理由は定かではなく、浅井家と朝倉家が父の代から同盟関係にあったことが原因だとする声もあれば、信長との同盟が対等なものから主従関係へと変化しつつあったため、長政側が不満を持ったという説もある。これまでもドラマによって解釈が異なる「浅井の裏切り」だけに、『豊臣兄弟!』ではどう展開するのか気になるところだ。

 秀長にとっても長政の裏切りは予想外だったのか、それとも予見して兄・秀吉に相談したものの、一蹴されたのか。もしくは、秀吉は長政が裏切る可能性を知りながらも、あえて防止策をとらずに、自分の見せ場を作ったのか……。ドラマでの描かれ方に注目したい。

 前作の『べらぼう』が大胆なストーリー展開を見せただけに、いろいろと想像が膨らんでしまうが、思えば、秀長も前半生は史料が少なく不明な点が多い。脚色の余地はいろいろとありそうで、物語運びが今から楽しみである。