グリーンランドの資源を米国の産業に組み込む
外交官ではないランドリー氏を起用した点にトランプ流の意図が込められている。ランドリー氏は「グリーンランドが確実に米国に加わるようにする必要がある」と公言。トランプ氏と同じく既存の外交慣例ではタブー視される「買収や併合」という考えを共有する政治家だ。
特使は正式な外交手続きや相手政府の承認を必要としない。ランドリー氏の地元ルイジアナ州はエネルギー・石油・ガス産業の拠点。グリーンランドの資源をどう米国の産業に組み込むかというビジネス視点での交渉に長けているとトランプ氏が判断した可能性がある。
ランドリー氏は、デンマークの補助金より米国のインフラ・開発投資の方がグリーンランドを豊かにするという取引を持ちかけ、米軍基地の重要性を盾に「独立=米国への加入または自由連合」という選択肢をグリーンランドの住民に直接提示するシナリオが考えられる。
トランプ氏にとってグリーンランドは「不動産」であると同時に21世紀の「空母」だ。ランドリー氏任命は中国の台頭という現実を見据え、冷徹に「実利と防衛」を最優先にするトランプ外交の本質を象徴している。資源利権を巡るトランプ氏とその周辺の思惑も見え隠れする。