「デンマークにとどまるのが最善」と考える人は6割前後で推移

 デンマーク本土ではグリーンランドの独立を「権利」として尊重しつつも戦略的な喪失を懸念する矛盾した心理状態に陥っている。25年に行われた複数の調査でも85〜90%という圧倒的多数が米国の買収に反対、「領土を売買する」という考えへの嫌悪感が定着している。

今年3月には、米国のバンス副大統領も夫人を伴ってグリーンランドを訪れている(写真:Handout/White House/Planet Pix via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

「グリーンランドが独立を望むなら承認すべきだ」と考える層は24年の58.8%から約62%に微増した。過去の「強制避妊問題」の発覚によりデンマーク国民の間に「負い目」や植民地主義の遺産を清算すべきだとの道徳的判断が広がっている。

 独立後のグリーンランドが米国など大国の完全な勢力下に入ることを懸念し「デンマークにとどまるのが最善」と考える人は依然として6割前後で推移している。一方、グリーンランド側では独立への意欲は高いものの現実的な「タイミング」について意見が割れる。

 グリーンランド人の約7割以上が将来的な独立を支持しているものの「今すぐ独立すべきか」という問いへの賛成は4割以下にとどまる。これは「経済的自立」「デンマークから年約39億デンマーク・クローネ(約960億円)の補助金の代替」に確証がまだ持てていないためだ。

 トランプ氏の再選後、米国を「対等な経済パートナー」として歓迎する声は若い世代で50%を超え、デンマーク一辺倒ではない外交を求める傾向が鮮明になっている。レアアース採掘の収益見込みが現実味を帯び、自立への自信につながっている。