マスメディアの弱体化で広がる「極端な声」

兼光:次に今のアメリカの分断はどこから来ているのかというと、私は2000年代以降のインターネットとテクノロジーの影響が非常に大きいと考えています。

 従来、ハリウッドやワシントンD.C.、大手新聞社などが世論をある程度調整していましたが、インターネットの普及によってその力が弱まりました。

 かつて、アメリカの新聞は、求人や不動産、物品売買などの広告が最大の収入源でした。政治的立場に関係なく、生活のために必ず買われる存在だったのです。そのため、左右の意見を並べても購買数が落ちにくく、社会を啓蒙する役割を担う余地がありました。

トランプ米大統領(写真:UPI/アフロ)

 しかしインターネットによってこの構造が崩れ、クリック数を稼ぐ記事が増えました。SNSでは対立を煽る投稿ほど拡散され、広告収入につながる構造が出来上がっています。結果として、人々は自分と同じ意見のクラスターの中でのみ議論するようになり、合意や妥協が成立しにくくなりました。

 そもそも共和党の草の根には反インテリ的な潮流があり、ハーバード大学やハリウッドを嫌う感情は以前から存在しました。東西海岸と「Flyover country(飛び越される真ん中のアメリカ)」という分断は、かなり昔からあります。