米国に根付く「選挙区操作」と経済格差
兼光:もう一つ分断の大きな要因が「ゲリマンダリング(選挙区操作)」です。
米国では国勢調査を10年ごとに行い、そのデータを基に州政府が選挙区を引き直します。人種、収入、年齢などの詳細なデータを用いることで、特定の政党に有利な選挙区を作ることが可能になります。

その結果、接戦区が減り、候補者選びの先鋭化が指摘されています。中道層を取り込む必要がなくなり、民主党も共和党も、より極端な主張の候補が当選しやすくなっているということです。
さらに、アメリカは貧富の差が激しく、セーフティネットが非常に弱い社会です。皆保険制度がなく、医療費が自己破産の大きな要因とも言えるほどです。そうした経済的不安が強い社会では、新しい移民が最初に攻撃対象になりやすい。
これは19世紀末の日系人排斥から、アイルランド系、イタリア系、そして現在のヒスパニック系に至るまで、繰り返されてきた現象です。少し前に移民として入った人々が、さらに新しい移民を排除しようとする構造です。トランプ支持者の中にヒスパニック系が含まれるのも、その文脈で理解できます。