ChatGPTがなかった時代に戻ることは可能か?

 AIによる「ノイズ」を除去するために、AI以前の過去に引きこもるしかないという現状は、現在のウェブがいかに危機的な状況にあるかを逆説的に浮き彫りにしている。ユーザーはこのツールを使うことで、検索結果がいかに静かで、かつてのように「人間の手によって書かれた」情報で構成されていたかを再確認することになる。

 ニュースサイト「404 Media」のジャナス・ローズ記者はスロップ・イベーダーを紹介する記事の中で、このツールを使った感想を「爽快であると同時に悲痛でもある」という独自の表現で語っている。

「この情報はAIが生成したものではないか?」と常に疑心暗鬼になることなく、自由にブラウジングできる解放感があるという点で爽快なのだが、 その自由が「時間に閉じ込められた」ものであり、人間中心のウェブはもはや過去のもの(ノスタルジー)でしかないという事実を突きつけられるのが悲痛なのだという。そして、このツールの最大の意義を、実用性よりもその「思想的・政治的なメッセージ」に見出している。

 スロップ・イベーダーよりももう少し実用性の高い「スロップ対策ツール/サービス」も存在する。

 たとえば、前述の404 Media記事でも触れられている検索エンジンDuckDuckGoは、そもそも「ユーザーを追跡しない、プライバシー保護特化型の検索エンジン」という趣旨で提供されているサービスなのだが、スロップ対策機能として「AI生成画像の除外オプション」を導入している。

 これは文字通り、AIによって生成された画像を検索結果からフィルタリングする機能で、検索意図とは無関係な、AI特有の不気味な合成画像やフェイク画像が視界に入るのを防ぐことができる。

  スロップ・イベーダー開発者のテガ・ブレインもこの動きを評価しており、将来的にはテキスト検索においても、AI生成が疑われるコンテンツを排除するオプションが追加されることを期待している。