続々登場しているスロップ対策ツールとは

 たとえば最近、宮城県女川町が公式X上で、町内にクマが出没したというお知らせをポストした。ただ、そのお知らせに掲載されていた画像は、実はAIによって生成されたもの。町の公式アカウントで、フェイクニュースを発信してしまったわけである。

 当該ポストは既に削除済みで、その代わりに経緯を知らせるお詫びのポストが投稿されている。それによると、画像は外部から寄せられたものだったのだが、町民の危険回避を優先するために、事実関係を確認する前に急いで掲載してしまったということのようだ。このような形でソースのロンダリングが起きてしまうと、フェイクに気付くのは難しくなる。

 SEO企業のGraphiteが2025年10月15日に発表した調査レポートによれば、ウェブ全体のアーカイブである「CommonCrawl」からランダムに抽出した6万5000件のURL(英語記事)を分析したところ、2024年11月ごろにAI生成記事の数が人間の書いた記事を上回っていたという。

 最近の画像・映像生成AIの進化と普及を思えば、画像や映像系のコンテンツについても同様の逆転が間もなく起きるか、あるは既に起きていると考えられるだろう。私たちは既に、スロップの時代に生きているのだ。

 スパムメールと同様、こうしたスロップを手動で排除するというのは時間と手間がかかる。しかも生成AIが進化した結果、人間がつくったのか、それともAIが生成したのか区別するのが非常に難しいケースも多い。女川町の公式Xの担当者がまんまと騙されてしまったのも、決して非難できないと感じている方が多いはずだ。

 そこで最近、さまざまなスロップ対策ツールが登場している。そのひとつが、これから紹介する「スロップ・イベーダー(Slop Evader)」だ。

 これはアーティストであり研究者でもある、テガ・ブレインという人物によって制作された、ウェブブラウザの拡張機能だ。ChromeやFirefoxといった主要なブラウザに対応しており、ユーザーはスロップにより「汚染」される前のインターネット体験を取り戻すことができるという。

 機能自体は極めてシンプル、かつラディカルだ。