「脱炭素は富裕層とエリートだけの夢物語」

 英国政府は30年にガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止し、ZEV販売比率を28年に52%、30年に80%まで引き上げる強い義務を自動車メーカーに課す。しかしeVEDは脱炭素化の政策と真逆の方向へ圧力をかける。

 OBRが44万台の販売減を見込んだように、EV補助金の後押しを上回るeVEDによる需要減が発生する恐れが高い。市場の不確実性が増せば、ZEV規制達成のため自動車メーカーの値下げ圧力が強まり、経営がさらに苦しくなる。

 家庭充電にかかる付加価値税(VAT)は5%だが、公共充電は20%のまま据え置かれた。走行距離課税により公共充電ユーザーの負担はさらに重くなる。「脱炭素は富裕層とエリートだけの夢物語」という感覚が広がれば、社会的支持を失い、脱炭素への移行が停滞する。

 ニュージーランドでは23年12月にEVの新車販売シェアが約4割に達したが、24年1月に補助金が打ち切られると、シェアは一気に3%前後に急落した。その後EV走行距離課税も導入され「EVへの需要が冷え込んだ」と分析されている。

 英国でも「消費者心理が脆弱な段階で負担を増すと普及が失速する」と懸念される。EV成長の減速は設備投資の回収リスクを高めるため、大手事業者は政府に再考を求めている。