アメリカの力の源泉は、情報収集・発信能力にある。CIA(中央情報局)やDIA(アメリカ国防情報局)が機能不全に陥れば、アメリカの安全が脅かされる。ところが、トランプは、VOA(ボイス・オブ・アメリカ)やRFE/RL(ラジオ・フリー・ヨーロッパ / ラジオ・リバティー)なども解体しようとしている。ロシアや中国のような権威主義国家が今なお力を持っている現状で、情報組織の解体は禍根を残す愚策である。
「中国製造2025」はほぼ100%達成の見込み
今年の3月5日〜11日に全人代が開かれ、今年の実質GDP成長率を「5%前後」とする目標を明らかにした。財政赤字の対GDP比を昨年目標の3%から4%前後に引き上げ、超長期特別国債の発行額を昨年の1兆元(約20兆円)から1兆3000億元に増加した。
しかし、不況の今、中国人には節約志向が高まっており、個人消費の伸びによる内需の拡大には大きな期待は持てない。5%成長は容易ではなかろう。
先端技術開発に関しては、中国の新興企業デイープシーク(DeepSeek)が開発した生成AI(人工知能)が、高性能な上に低コストで世界に大きな衝撃を与えた。
アメリカから締め出しを食らった中国企業は、独自の努力で困難を克服し、再生を図っている。その典型は華為(ファーウェイ)で、同社の北京の拠点を私も視察したが、みごとに復活し、世界最高水準のスマホの開発に成功したり、自動車産業に進出したりしている。
ディープシークも同様で、アメリカの対中規制によって、生成AIの開発に必要なエヌビディアの最新半導体が入手できない状況になったため、既存のAIモデルが出力するデータを使う「蒸留」という手法で、新たな生成AIを創った。
まさに、アメリカの規制を梃子(てこ)にして、中国は先端技術開発で長足の進歩を遂げている。中国政府が2015年に策定したハイテク振興計画である「中国製造2025」は、ほぼ100%計画を実現するようである。
その他、EVやドローンの分野でも、日本の先を走っている。
アメリカの関税攻勢に関しては、中国は、レアアースの輸出規制などの対抗手段でアメリカを屈服させている。11月24日の米中電話首脳会談でも、トランプは習近平にアメリカ産の農産物に輸入拡大を求め、習近平はそれに同意したという。中国が輸入を制限すれば、苦境に立つアメリカの農民は多い。来年の中間選挙を控えて、トランプは中国に頭を下げるのである。このように、関税は、中国にはあまり効果を持たない。
米中間の覇権競争の狭間で、日本はどのような舵取りをしていくのか。高市は、この問題の深刻さを認識しているのであろうか。




