大学進学でも中国の競争は日本の比ではなく、東大をはじめ、大学院は、本国での競争を回避する中国人留学生で溢れている。アジアの大学ランキングでは、日本の大学は20位以内にいない。上位は中国の大学である。

 日本の大学は、研究開発費も少なく、先端技術競争で中国に負けている。

アメリカの力の相対的低下、トランプも覇権国の役目を自ら放棄

 第二次世界大戦後の世界は、それまでのイギリスに代わって、アメリカが世界の覇権国となった。「パックス・アメリカーナ(アメリカの平和)」である。しかし、トランプのアメリカ第一主義に見られるように、今のアメリカは、世界に国際公共財を提供する意欲も能力も減退している。

 世界一の大国は、それなりの責任を負うが、それは自分のためでもある。自国の安全を保つために、世界中に軍隊や基地を展開する。また、世界を、そしてアメリカを繁栄させるために、自由貿易を推進する。さらには、自国の通貨ドルを基軸通貨として、世界の金融システムの円滑な作動を保証する。

「公共財」という考え方がある。安全保障、自由貿易、国際金融などは公共財とみなすことができる。つまり、「ただ乗り(free ride)」を許すということである。大国が提供する公共財に小国は「ただ乗り」しているわけであるが、それでも覇権国は寛大である。

 ところが、今のトランプには、この考え方が通用しない。要するに、アメリカはかつてのような大国ではないので、他国に「ただ乗り」させる余裕はないというのである。

 それが関税攻勢という発想になった。また、安全保障についても、アメリカは、同盟国に防衛費の増加を求めている。

 トランプは、まさに国際公共財の提供を止めようとしているが、それは、アメリカが凋落しつつあることの証左である。

 トランプは、アメリカの国際的影響力を低下させるような政策を提案している。

 たとえば、トランプはUSAID(国際開発局)を解体してしまった。この組織は、東日本大震災のときにも日本に救援に駆けつけるなど、世界から高く評価されていた。