チャールズ・チャップリン(写真:World History Archive/ニューズコム/共同通信イメージズ)
朝ドラ史上、最高傑作の誕生――。すでにそんな声さえ上がっている、NHKの連続テレビ小説『ばけばけ』。明治時代の作家・小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、妻の小泉セツはどんな生涯を送ったのか。ラフカディオ・ハーンをモデルとした英語教師のヘブンと、その妻・小泉セツをモデルとした主人公・松野トキが、いよいよ生活を共にすることになった。これからの展開に注目が集まっているが、実はラフカディオ・ハーンが小泉八雲として書いた『怪談』に惹かれて、来日を決意した人物がいた。著述家で偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
妻のセツに物語を語らせながら生まれた『怪談』
「本当にこの2人は夫婦になるのだろうか?」
毎回のオープニングで仲むつまじい松野トキとヘブンの姿を見るたびに、そんな不安に駆られるのは、私だけではないようだ。SNSでも同様の意見が多く投稿されている。
なにしろ、ヘブン先生のもとで女中として働くことになったトキは、言葉の壁もあり、失敗ばかり。結婚相手どころか、何度となく女中をクビになりそうになり、見ていてヒヤヒヤさせられる。
だが、このドラマは、トキがヘブンに怪談話を聞かせるシーンからスタートしている。これからの展開としては、トキが無類の「怪談好き」であることが、2人の距離を縮めることになりそうだ。
ヘブンのモデルとなっているラフカディオ・ハーンも、妻の小泉セツに「物語を話してほしい」と度々ねだった。それも本を読むのではなく、「あなたの言葉で語ってほしい」とこだわりを見せたという。
ハーンにとっては、妻のセツが物語をどう解釈し、どんなふうに語りかけるかが大切だったようだ。やがて「小泉八雲」の筆名で『怪談』を英語で書き上げた。妻のセツから聞いた日本各地に伝わる伝説や幽霊話を、ハーンが自分なりの解釈を加えながら蘇らせたところ、多くの言語に翻訳されることになった。
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)/写真:共同通信社
ハーンの『怪談』を愛読した外国人の一人が、喜劇王として名を馳せたチャールズ・チャップリンである。

