AIは本質的にKY
例えば、トヨタ自動車などの先進的な工場においても、AIによる画像検査は導入されつつありますが、最終的な「官能検査」や微調整は、依然として熟練工(匠)が担当するケースが多くあります。
同じ部材でも、その日の湿度による金属の膨張や、数値には表れない手触りの違和感など、センサーでは拾いきれない情報を人間は一瞬で統合し、補正してしまうからです。
また、人間が完璧にこなすものの代表例が、対人コミュニケーションにおける文脈の共有です。
私は講演会で日本全国を回っていますが、会場の空気感は毎回全く違います。参加者の姿勢、間の取り方、笑いが起きるリズム・・・。
これらはAIにとってはノイズにしか見えませんが、人間にとっては重要なシグナルです。
ある企業研修で、AIアバターがファシリテーターを務める実証実験に立ち会った際のことです。
AIは完璧なシナリオを話しましたが、参加者が考え込んでいる有意義な沈黙を応答なしと判断して即座に次の話題を振ってしまい、場の熱を冷ましてしまう場面がありました。
参加者からは、優秀だが間の取り方が気持ち悪いという声が上がったのです。
AIはテキストとしての文脈は理解していても、その場に流れる非言語的な文脈を理解していません。
さらに、完璧を追求するほど、人間の側には特有の余白が生まれます。
その余白こそが、AIには模倣できない強みです。