人間を中心としたAIへ
私が若い頃、コードは厳密であるべきだと信じていました。
しかし、熟練のプログラマーほど、あえて「疎結合(Loose Coupling)」な、余裕を残した設計を好みます。
将来の仕様変更や予期せぬトラブルを前提に、機能をガチガチに固めすぎない構造を作るのです。
これは経験に基づく見極めであり、論理的な正解のようでいて、実は職人的な直感による最適化です。
AIエージェントは仕様が確定している環境(Closed World)では圧倒的に強いのですが、仕様が未定であったり、曖昧さが混じる現実的な局面(Open World)では、最適解を見つけられず混乱してしまうことがあります。
とはいえ、私はAIエージェントを悲観しているわけではありません。
むしろ、人間が完璧にこなせる領域を再認識することで、AIが真価を発揮すべき場所がより明確になったと感じています。
人間の強みが「曖昧さ・余白・身体知」だとすれば、AIエージェントの強みは「高速処理・網羅性・即応性」です。
両者を対立させるのではなく、重ね合わせることで企業活動はより滑らかになります。
昨今、富士通などの国内IT大手が推進している「Human Centric AI(人を中心としたAI)」という考え方も、まさにこの方向へ舵を切っています。