“ローテク”に妥協していいのか

 経済産業省の次の目標である「キャッシュレス決済比率80%」も、QRコード決済の普及によって実現されるようでは利用者側の利便性はあまり高まらないでしょう。改めて、「日本のキャッシュレス決済の目指すべき姿」を再整理する必要があるのではないでしょうか?

 キャッシュレス決済では遅れていた中国で普及したQRコード決済ですが、中国は次に顔認証決済を普及させようとしているようです。ただし、顔認証決済は2020年頃に盛んにいわれていましたが、どうもそこから進展がないようなので、頓挫しているのかもしれません。

 とはいえ、決済分野に限らず「新たなハイテクへの情熱」が感じられる中国と、ローテクへの回帰が進む日本との間の国としての勢いの差が「SuicaがQRコード決済を導入」というところに端的に表れているような気がしてなりません。

 現在、現金決済インフラのコストという課題に対応するためにキャッシュレス決済の普及が推進されていますが、しばらくしたら、「QRコード決済インフラのコスト」が国家的な課題として浮上してこないとも限りません。

 国の成長は飽くなき新技術への渇望が牽引するものです。民間企業が目先のコストを惜しんでローテクで妥協してしまうことのないよう、政府も適切な指導力を発揮していくべきではないでしょうか。