日本は非接触「タッチ決済」でキャッシュレス先進国だった

 日本のキャッシュレス決済の草分け的存在といえばやはり「Edy」でしょう。ユーロ(Euro)、ドル(Dollar)、円(Yen)の頭文字を取り、第4の通貨を目指すという壮大な目標の下、2001年に本格的なサービスを開始しました。現在は楽天グループに買収され、「楽天Edy」になっていますが、サービスイン当時は非常にスタイリッシュな印象があったことを覚えています。

 同時期にSuicaもサービスを開始しました。こちらも、それまで券売機で切符を買って自動改札に投入するというものから、改札でのタッチで入場・出場が完了するという体験への転換はとても洗練され、未来感のあるものでした。

 これらは、いずれもソニーが開発したFeliCaという技術が使われています。技術的な説明は省きますが(というか私もよくわかりません)、通信速度が速いため、改札や店頭での決済に適した技術だということです。

 さて、これらのキャッシュレス決済は大変便利でスタイリッシュなものでしたが、大きな弱点がありました。それが「プリペイド(前払い)型」であったということです。つまり、使用するにあたって事前のチャージが必要であり、それがキャッシュレス決済の快適さを大きく損なっていました。

 みなさんも改札で「残額が足りません」と跳ね返されて、しぶしぶ券売機でチャージした経験があると思います。

 これらの電子マネーは「前払式支払手段」という資金決済法上の仕組みを使っており、要は商品券や図書券、テレホンカードなどの仲間です。先にお金を払って「電子マネー」を買うという発想です。

 そんな中、2005年にポストペイ(後払い)型のキャッシュレス決済が登場します。それが、JCBが提供するQUICPayです。2006年にはNTTから同じくポストペイ型のiDが登場し、以後、「事前にチャージする」という手間がキャッシュレス決済から省かれていくことになります。Suicaも2006年からオートチャージに対応し、Edyも2015年にはオートチャージに対応しました。

 私はサービス開始当初からのQUICPayユーザーで、もう20年もQUICPayを使っていることになります。Edyは事前チャージが面倒だと思っていたので、QUICPayのリリースとともに即座に乗り換えました。クレジットカードと紐付いたポストペイ型電子マネーはキャッシュレス決済の1つの完成形であると思っています。

 当初はQUICPayが使えるところが少なくやや不便でしたが、今では利用できる店舗も大幅に増えました。現在私の主要な決済デバイスはQUICPayコインで、常にこれをポケットに突っ込んでいます。スマホと違ってガチャガチャしないところが気に入っています。

QUICPayコインのイメージ(出典:JCBのプレスリリースより)

 QUICPayやiDはクレジットカードの仕組みを使っているので、法的な根拠は割賦販売法になります。ひとことで電子マネーといっても、EdyやSuicaとは法律上の根拠はまったく違うということです。

 キャッシュレス決済はクレジットカードが圧倒的なシェアを占めていますが、少額決済でいちいちカードを出すというのはやはり面倒で、私としては少額のキャッシュレス決済の領域では非接触型のタッチ決済が普及していくものと思っていました。しかし、潮目が変わる事件が起きます。それがQRコード式決済の登場です。