なぜSuicaにQRコード決済?
さて、またSuicaの話に戻りますが、報道によると、タッチ式のまま決済額の上限を引き上げることも技術的には可能であったが、コストがかかるため断念したとのことです。日本経済新聞は、以下のように書いています。
「JR東はコード決済を採用せず、電子マネーのチャージ上限を引き上げることも可能だった。ただ、これにはコストと時間の壁が立ちはだかった。
スイカを含む交通系電子マネーの利用可能店舗数(9月末時点)は約220万店に上る。電子マネーの上限を引き上げるには、取扱店舗に設置された決済端末を改修しなければならず、数十億円の費用が発生する可能性があった。駅の改札や、1億1000万枚に上る発行済みカード型スイカの切り替えにも追加負担が生じる。」(日本経済新聞電子版11月16日付『Suicaになぜコード決済? JR東日本、30万円上限で目指す「復権」』)
JR東日本も民間企業である以上、コストの問題を避けて通るわけにはいきません。ただ、せっかく交通系マネーとして広く普及し、しかもタッチ決済というスマートな体験を実現できる可能性があるにもかかわらず、ローテクのQRコード決済を導入してしまうことは率直にいって残念です。
数十億円のコストが生じる可能性といっても、後発のPayPayが当初市場に投入した資金に比べればかなり小さい金額で済むと思うのですが、とはいえ経営判断としてはコストを無視するわけにはいかなかったということでしょう。
QRコード決済は確かに現金に比べればマシでしょうが、既にタッチ決済やクレジット決済が普及していた日本において、あえて広げるべきインフラではないと考えています。ローコストであることの強みを活かして少額決済の飲食店にQRコード決済を導入するというくらいの話なのであればともかく、Suicaのように、高額決済のためにQRコード決済を導入するというのはあまり筋がよい話であるとは思えません。