国連軍司令部の要請により板門店見学ツアーが中止されていた期間には、外国人特別見学も実施しなかった。「10月末~11月初めには統一部が実施する板門店特別見学はない」(統一部報道官)。

 また、米朝首脳会談に備えたある準備の状況も報道されている。

「米朝首脳が6年ぶりに再び板門店で会う可能性などに備え、米政府準備チーム10人余りが先週、韓国入りしたことが分かった」(民放SBS、10月20日付報道)

4つのアジェンダ

 このように米朝が事前に接触しながら会談を打診してきたにもかかわらず、会談が実現しない理由は何だろうか。それは両国が望む議題などの思惑が合わなかったからだと思う。

「北朝鮮は米国側に『米朝会談を本当に望むなら、次のようなアジェンダを真剣に考慮すべきだ』と要求した」(前出B氏)

 第一に、非核化の議論はしないこと。第二に、韓米合同軍事演習を中止すること。第三に、元山葛麻海岸観光地区の問題だ。

 この第三の部分は、米国が自国民に対し取っている北朝鮮への旅行禁止を解除してもらい、米観光客を元山葛麻海岸観光地区へ誘致することが目的だったという。今回の米朝会談が実現されなかったためか、11月にトランプ政権は来年8月まで北朝鮮への旅行禁止を延長した。

 北朝鮮側は米朝会談が実施され、会談も順調に進めば、同地区に「トランプ・ワールド・ビル」建設を提案することまで考えていたという話も聞こえてきている。ただし、このビル建設の話は、トランプ氏の歓心を買うための“探り”のネタだった可能性もある。

 第四に、米国側が朝鮮戦争で戦死した米軍兵士の遺骨処理問題を論議しようという意思を明確にしてほしいということだ。北朝鮮が米軍兵士の遺骨を米国側に引き渡したことは、以前にも数回あった。最近では、2018年7月に55体の米軍兵士遺骨を在韓米軍側に引き渡し、遺骨が65年ぶりに米国に送還された事例がある。

2018年7月、北朝鮮は、朝鮮戦争で戦死したアメリカ兵のものと見られる遺骨をアメリカに返還した。写真は遺骨がハワイのパールハーバー・ヒッカム統合基地に到着したところ=2018年8月1日(写真:AP/アフロ)