現在のスパイ対策法
上記したが、スパイ対策には2通りの方策がある。一つは、一般に秘密保全といわれる予防措置である。
もう一つは、スパイ活動探知し、逮捕する制圧行為である。
以下、「守秘義務に関連する法律」、「スパイを取り締まるための法律」および「産業スパイを取り締るための法律」に区分して述べる。
(1)守秘義務に関連する法律
今日の日本の法律で、安全保障に関連する守秘義務を規定している法律は、国家公務員法(地方公務員法および外務公務員法は、国家公務員法に準ずる)、特定秘密保護法、自衛隊法、「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」、「日米安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法」、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」である。
また、それぞれの法律には罰則規定が定められている。以下、それぞれの守秘義務に係る条文のみを紹介する。
ア.国家公務員法
第百条には「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」と規定されており、この規定に違反して秘密を漏らした者(そそのかし又はその幇助をした者を含む)は「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に処せられる。
イ.特定秘密保護法
第二十三条 特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の拘禁刑に処し、又は情状により十年以下の拘禁刑及び千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。
ウ.自衛隊法
第五十九条には「隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を離れた後も、同様とする」と指定されており、この規定に違反して秘密を洩らした者(教唆し、又はそのほう助をした者を含む)は、「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」に処せられる。
エ.日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法
第三条には「特別防衛秘密を取り扱うことを業務とする者で、その業務により知得し、又は領有した特別防衛秘密を他人に漏らしたもの」は、十年以下の懲役に処すると規定されている。
「特別防衛秘密」とは米国から供与された船舶・航空機・武器・弾薬などの装備品や資材に関する非公開情報をいう。
オ.日米安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法
第六条には、「合衆国軍隊の機密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者」は、十年以下の懲役に処すると規定されている。
カ.核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
第六十八条の三には「原子力事業者等及びその従業者並びにこれらの者であつた者は、正当な理由がなく、業務上知ることのできた特定核燃料物質の防護に関する秘密を漏らしてはならない」と規定されており、この規定に違反した者は、「一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められている。
キ.不正競争防止法
第二十一条第1項には、詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者は、「十年以下の拘禁刑若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められている。
また、第二十一条第5項には、日本国外において使用する目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者は、「十年以下の拘禁刑若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められている。
この法律により、労働者は、在職中、退職後を問わず、営業秘密を保持すべき義務を負っているとされるが、同法には明確な規定がない。したがって、各組織は、入社時に「守秘義務」と「競合避止義務」の契約書を確実に作成させる必要がある。