北京で開催された抗日戦争勝利80周年記念軍事パレードに登場した超音速ミサイル「YJ-21」(9月3日、写真:ロイター/アフロ)
2025年10月17日、中国国防省は、人民解放軍の最高指導機関・共産党中央軍事委員会の何衛東副主席や、同委メンバーで政治工作部主任を務めた苗華氏ら軍幹部9人について、「重大な党の規律違反」により党籍と軍籍の剥奪処分を受けたと発表した。
何衛東氏は、中央軍事委員会では主席を務める習近平主席に次ぐ高位で、制服組トップの一人である。
党内ではトップ24人に入っていた政治局員で、現役の政治局員が失脚するのは、2017年に党籍剥奪などの処分を受けた孫政才・元重慶市党委員会書記以来である。
処分が発表された9人は、全員が軍最高位の上将で、今後、軍内の司法手続きで裁きを受ける。
人民解放軍で台湾を担当する東部戦区の司令官だった 林向陽氏や、核・ミサイルを運用するロケット軍で司令官を務めた王厚斌氏ら作戦部門のトップ級も含まれている。
国防省報道官は「職務に関わる犯罪への関与も疑われ、金額は巨額で、影響は極めて劣悪」と説明した(出典:読売新聞2025年10月17日)。
作戦部門や台湾を担当する「東部戦区」やミサイルを運用するロケット軍の前司令官も処分対象になっており、習近平氏が目標にしていると指摘される2027年までの中台統一に向けた準備に影響が出るとの見方もある。
他方、人民解放軍機関紙、解放軍報は10月18日、9人の軍高官が重大な規律違反などの疑いで共産党の党籍剝奪処分を受けたことについて、9人の処分は汚職を取り締まる「反腐敗闘争」の「重大な成果だ」とも指摘した。
社説では、何衛東・中央軍事委員会副主席ら9人は全軍の政治的基盤を深刻に揺るがし、幹部のイメージに重大な損害を与えたと批判。
全軍と武装警察部隊は党中央の決定を支持し、軍トップの中央軍事委主席を兼ねる習近平国家主席の指揮に従うべきだと主張した。
さて現在、2027年に4期目を目指す習近平氏にとっては、台湾統一という偉業達成が絶対条件となっているという見方がある。
そして、2027年台湾統一説が流布されている。
そこで、本稿では軍高官の腐敗が蔓延している人民解放軍が、台湾に武力侵攻した場合に勝てるのか勝てないのかについて私見を述べてみたい。
以下、初めに中国の歴史が培ってきた腐敗文化について述べ、次に習近平主席の終わりなき汚職撲滅の闘いについて述べる。
さらに、なぜ人民解放軍高官の腐敗が後を絶たないのかについて述べ、最後に人民解放軍が台湾に武力侵攻した場合に勝てない理由について述べる。