4.台湾に武力侵攻しても勝てない理由

 軍高官の腐敗が蔓延している人民解放軍が、台湾に武力侵攻した場合に勝てるのか。

 筆者は、人民解放軍は勝てないであろうと見ている。

 なぜか。一言でいえば、兵士の士気が高いわけがないからである。軍隊は生死を賭する戦闘を職分とするからである。

 戦闘において敵と戦う力が戦闘力である。戦闘力の優劣が勝敗を決する。

 戦闘力は有形的要素と無形的要素から構成される。有形的要素とは兵器の性能・威力などである。無形的要素とは兵士の士気・規律・団結などである。

 組織員の士気・規律・団結が戦闘力(無形的要素)の重要な要素であることに間違いない。

 士気・規律・団結は、指揮官を中心とする組織員相互の信頼と友愛の精神から生まれるとされる。

 従って、指揮官には、部下から信頼・尊敬される資質、すなわち、誠実さ、責任感、自制心、公平さといった徳性が必要であるとされる。

 地位や職権を利用して、私腹を肥やしている指揮官を部下が信頼・尊敬するとはとても思えない。

 そして、そのような指揮官の部隊は、士気が低く、規律が守られず、仲間意識が希薄となり、突撃命令が下令されても、兵士が我先にと敵陣に突撃するとは思えない。

 ちなみに、現在、ウクライナに軍事侵攻しているロシア軍は、督戦隊を前線に展開している。

 督戦隊は、兵士の逃亡を防ぐための部隊である。これは、ロシア軍の兵士の士気の低さや規律の欠如を証明するものである。

 要するに、地位や職権を利用して、私腹を肥やしている人民解放軍の指揮官が指揮する部隊の戦闘力では勝てないということである。

 付言するが、賄賂が介在すると、業者は本来の性能や安全基準を満たしていない部品や素材を使用したり、必要な検査を省略したりする可能性があることにも留意する必要がある。

 従って、軍高官の腐敗は、有形的要素の戦闘力(兵器の性能など)の低下にもつながるものである。