米国を訪問、トランプ大統領と会談したウクライナのゼレンスキー大統領(10月17日撮影、ウクライナ大統領府のサイトより)
2025年9月23日、ドナルド・トランプ米大統領がロシアの侵攻を受けるウクライナについて、少なくとも2022年2月24日の侵攻開始時の状態まで領土を奪還できるとの見方を示した。
「時間と忍耐のほか、欧州や、特に北大西洋条約機構(NATO)からの財政的な支援があれば、この戦争が始まった際の元の国境まで(領土を)奪い返すことは、十分ありうるオプションだ」
国連総会の一般討論演説のために米ニューヨークを訪れていたトランプ氏は9月23日、SNSにこう投稿した。
戦況やロシアの経済状況を把握したことが理由という。
ロシアを見かけ倒しの「張り子の虎」と呼ぶ一方、ウクライナについては「屈強な精神を持ち、強くなるばかり」と称賛した。
(出典:朝日新聞「トランプ氏『ウクライナ領土奪還可能』融和姿勢転換?ロシアは反発2025年9月24日」)
トランプ氏はかねて、ウクライナが領土を奪還することは難しいとして、領土の一部割譲にも言及してきた。
ところが今回、ロシアを「張り子の虎」と呼び、ウクライナは現在ロシアが占領している領土を取り戻すことができると述べた。
独善的で人の意見を聞かないトランプ大統領の豹変ぶりは、まさに驚天動地の出来事である。
また、トランプ大統領はつい先日(10月10日)、ウクライナへの「トマホーク」ミサイル供与を示唆する発言をしたが、10月16日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話協議すると、また豹変した。
10月17日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とのホワイトハウスでの首脳会談において、トマホークの供与について慎重姿勢へ転換した。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が、TACO(Trump Always Chickens Out:トランプはいつも尻込みする)と書いたのは、まさに正鵠を射ているとしか言いようがない。
さて、上述した9月23日の豹変について、トランプ氏は戦況やロシアの経済状況を把握したことが理由だとしている。
ロシアの経済状況について、ある経済専門家は次のように述べている。
「ロシア経済はいわば“エンジンが故障した飛行機”に乗っている状況であるが、中央銀行の総裁など、パイロットの腕がすごくよくて、何とか墜落することなく飛ばしている状況である」
また、戦況については、ウクライナは長距離ドローンや長射程ミサイルでロシア領内の石油精製所を攻撃する新しい戦い方を始めている。
なぜ、ウクライナは、石油精製所を目標にしているのであろうか。
あるウクライナ軍将校は、米誌アトランティックに対し、ロシアの石油施設を意図的に狙っている理由について、「ロシア人は大規模な人的損失を耐え忍ぶことができ、人命など顧みない。だが、経済的な損失を出せば、苦痛を与えることができる」と述べている。
さて、本稿では、ロシアは本当に経済的困難に直面しているのか、また、ウクライナ軍のロシアの石油関連施設を狙ったドローン攻撃はどのような成果を上げているのかについて述べてみたい。
以下、初めにロシアの経済の現状について述べる。次に、深刻化するロシアの燃料危機について述べる。
次に、ウクライナのドローンおよびミサイルの製造能力および攻撃能力について述べる。最後に、ウクライナがプーチンに勝利する方法について私見を述べる。