リフレ派と訣別するか、怨嗟の声に直面するか
直情的な為替市場は高市政権の「本音」がリフレ政策にあるものとして、円売りを初手として選ぶのが賢明というのが現状にある。自らが好んだインフレ誘発的な政策が世論の怨嗟を生み、その怨嗟を受けて「本音」がリフレから非リフレに変わるのか。変わるとしたらいつなのか。
ドル/円相場で言えば、多くの市場参加者が介入警戒ラインとして受け止めている160円に接近した辺りだろうか。
しかし、為替水準を受けての方向転換は得てして手遅れのことが多い。160円までの円安・ドル高を看過すれば、その分、輸入物価経由でのインフレ輸入を甘受することになるし、為替市場が自己実現的な暴走を始めた場合、為替介入や利上げのような当局対応は逆に取引材料に使われる(円売りで煽り、為替介入や利上げが実施されたタイミングで買い戻せば収益機会になる)。
為替市場で本格的に争点化する前に、「本音」としての非リフレ転換を高市政権には期待したい。現実的には円建て輸入物価指数やこれに伴うCPIの上振れなどを入念に注視することで、その転換機会を捉えることができるのではないかと思う。
※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2025年11月12日時点の分析です
2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中





