政策協議に臨む自民党の高市氏(写真:ロイター/アフロ)
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
欧州化する日本政治
周知の通り、四半世紀続いた自公体制の終焉が日本政局の流動化を招いている。本稿執筆時点(10月20日)では、次期政権の形は定まっていないものの、自民党と日本維新の会による連立合意が報じられており、まずは高市政権の発足に賭けてもよさそうな雰囲気である。
改めて痛感するのが日本政治の欧州化だ。
周知の通り、近年の欧州主要国では有権者の支持が主要政党から離れ、新興政党を含む複数政党に分散する傾向が強まっている。自民党一強が揺らぎ、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、参政党などの複数政党が相応の議席数を押さえるに至っている現在の構図は、過去15年程度をかけて欧州で慢性化してきた事象である(図表①)。
【図表①】

今回の本欄では、事実確認とその背景、日本への含意を整理しておきたい。
少数与党・多党連立はもはや欧州政治の日常である。そうなり始めた時期は各国ごとに微妙に違うが、基本的には欧州債務危機の弊害と考えて差し支えない。
危機の緊張感がピークに達した2011年以降、大きな国政選挙を経るたびに不安定な状況が顕在化している。
有効政党数が軒並み4を超える欧州主要国
政治学の世界には「有効政党数(ENP:Effective Number of Parties)」 と呼ばれる指標がある(各党の議席占有率の2乗を合計した値の逆数で算出)。数字が大きいほど議会の分裂度が大きいことを示しており、先行研究では「4を超えれば議会における調整負荷が増大し、政権の持続期間も短くなる」という指摘がある。
2000年以降の欧州主要国と日本のENPを見ると、やはり欧州債務危機(2009~2013年頃)を経て急激に上昇が見られ、今や5大国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ)のすべてで4を超えている(図表②)。
【図表②】

ちなみに、衆議院はともかく、今年7月の選挙を経て日本の参議院も4.5を突破しており、欧州並みの分裂度に至っている。結果、自民党の数的優位が見込めない中、信条を曲げてまで連立する誘因はないという公明党の判断は必然である。