金の店頭販売価格は9月29日、1グラム2万円を突破した。「田中貴金属直営店 ギンザタナカ本店」の電光掲示(写真:共同通信社)
急ピッチの上昇を続けてきた金相場が岐路にさしかかっている。年初から10月末までに国際価格、国内価格ともに約50%値上がりしたが、ここへきて下落も目立ち、“怒涛のゴールドラッシュ”は一服した感がある。これがバブルの終わりなのか、調整局面に過ぎないのかは判断が難しいところだ。折しも、国内では大手貴金属商が純金積立の手数料を値上げすることから、投資撤退を探る個人投資家も散見される。そうした中、年末から2026年にかけての相場はどう動くのか。金投資の現状をお伝えする。
(森田 聡子:フリーライター・編集者)
好調相場に水を差した中国の税優遇措置撤廃
金が株式投資のリスクヘッジだったのは、今は昔。2025年に米国、日本ともに株式市場が高値を更新する中で、金相場もそれを上回る勢いで上昇を続けてきた。金の国際調査機関WGC(ワールドゴールドカウンシル)は10月末に2025年第3四半期の世界の金需要が四半期としては過去最高の1313トンを記録したと発表した。
10月には、米大手銀行のアナリストが、金価格は2026年の第4四半期までに平均で1トロイオンス(31.1034768グラム)=5000ドルを上回り、2028年までに同6000ドルを目指すといった強気の見立てを示している。
しかし、そんな好調相場に水を差したのが、世界的な金の消費大国である中国で、11月から一部の小売り業者に対して適用してきた税の優遇措置が撤廃されたことだ。中国での需要減少懸念が浮上し、10月に4000ドルを超え4400ドル乗せをうかがう勢いだった金価格は一気に4000ドルを割り込んだ。
一般的に言って、FRB(米連邦準備理事会)の利下げは金利を生まない金にとって追い風となる。だが、10月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)で2カ月連続の利下げを決定したものの、パウエル議長が年内の追加利下げに否定的な発言をしたことから、金市場は先行き不透明感を増した感がある。
英国の調査機関は、「昨今の金市場は投資家のFOMO(乗り遅れる恐怖)によって押し上げられたものであり、2026年末までに1トロイオンス=3500ドル程度まで下がることになるだろう」と予測する。
そうした中で、「そろそろ潮時かもしれないと思った」と話すのは、20年近く純金積立を続けてきた50代の会社員の女性だ。