金の存在感を高めた通貨への信用低下
「自宅には金庫がない。このご時世に箱に入れて家の中に置いておくのも不用心だし、それだけのために銀行の貸金庫を借りて使用料を払うのも業腹だ」
せっかく20年も積み立ててきたのだから、現物を手に取って純金の輝きを愛でてみたい。しかし、保管の手間やリスクを考えると現金化を選ぶのが現実的だろう。それなら、投資の撤退を急ぐ必要もない。
変更期限が迫る中で、心は千々に乱れているという。
この1カ月ほどで、純金積立を行っている個人投資家数人から、この女性と同じような悩みを聞かされる機会があった。
意外だったのは、皆、手数料値上げへ抵抗感は強いものの、金相場自体にはそれほど悲観的な見通しを持っていなかったことだ。実際のところは、どうなのだろう。
「今のゴールドラッシュをFOMOだけで捉えるのは一面的」
そう指摘するのは、ある専門家だ。
昨今の金価格の上昇を支えてきたのが、米国や欧州の機関投資家による旺盛な投資需要。必ずしも短期の売買だけでなく、株式ファンドの中に積極的に金を組み込むケースも目立つ。
米国のトランプ政権による高関税政策が米ドルの信用を損ない、米国や日本などの財政赤字の拡大懸念、中東やロシア、ウクライナなどにくすぶる地政学的リスクも安全資産としての金の存在感を相対的に高めている。