転職成功の道を切り拓くもの

 少なくとも、その応募書類を無下にゴミ箱へ捨てることはないはずです。

 つまり、あなたがその求人に強い魅力を感じ、本気で転職を考えているのなら、求人票に書かれた条件を額面どおりに受け取って諦める必要はないのです。あえて応募してみるべきです。

 もちろん、条件を満たしていない以上、応募には工夫が必要です。これまでの経験で培った応用可能なスキル、将来性を感じさせるポテンシャル、あるいは若さや熱意といったものを、経験不足を補うアピールポイントとして提示するのです。

 最初から「無理だ」と諦めてしまえば、可能性は永遠にゼロのままです。もし、あなたの熱意が採用担当者の心を動かすことができれば、「一度会ってみようか」となる可能性は決して低くありません。

 特に、ほかにめぼしい応募者がいない状況であれば、そのチャンスはさらに広がります。
藤木さんは、自分自身で心にブレーキをかけてしまいました。

 魅力的な求人を見つけたら、臆することなく挑戦すべきです。「チャンスのある求人を諦める」必要など、まったくないのです。少し厚かましいくらいが、転職成功への道を切り拓くこともあるのです。

◎後編:優柔不断でお人好しな葬儀コーディネーターはなぜブラック企業に転職してしまったのか?人を信用しすぎたゆえの悲劇

川野 智己(かわの・ともみ)
転職定着マイスター/組織づくりLABO代表
 1962年生まれ。伊藤忠アカデミーの教育マネジャーを経て、大手人材紹介会社の教育研修部長として従事。斡旋した転職者の多くが早々に離職し、労働市場での価値を自ら下げている人(ジョブホッパー)が多く生まれている惨状に強い問題意識を持つ。そこで、転職定着・離職防止に取り組み、転職予備軍に対して「転職先での働き方・人間関係構築のノウハウ」を伝え、転職後のミスマッチ退職率を1年間で44.0%から9.1%にまで劇的に引き下げた。
 その経験を活かし、2006年に組織づくりLABOを設立、代表に就任。日本初の転職定着マイスターとして、転職者および予備軍のべ約2000人に対して個別カウンセリングやセミナーを行っている。併せて、採用側の企業が取り組むべきリテンション(離職防止)策を普及させるべく、全国での講演登壇や主要経済誌への執筆、TV出演など幅広く活動しており、労使両面からの「職場と働き手の最適解」を発信している。

著者の川野智己氏