転職市場では玉石混淆の業者や情報が跋扈している(写真:89stocker/shutterstock)
年間約300万人が転職している現在、転職してキャリアアップすることは当然のように思われているが、一方で、短期間で何度も転職を繰り返す“ジョブホッパー”が増えるなど、早期離職の連鎖も深刻化している。
その中で、組織づくりLABOの代表を務める転職定着マイスターの川野智己氏は、転職には「適性」があり、知識やスキルといった「実力」とは別の目に見えない資質、すなわち「転職適性」があると指摘する。転職に向いていない人には、どのような特徴があるのだろうか。
※本書は川野智己著『転職に向いてない人がそれでも転職に成功する思考法』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集しています。
◎前編:転職に向いていない人に見られるある特徴、求人票の募集条件を額面通りに受け止めたエンジニアに降りかかった悲劇
悪徳エージェントに利用されてブラック企業に
今回は、葬儀会社でコーディネーターとして働く桃山誠一さん(仮名:40歳)の事例を紹介します。
桃山さんは、遺族に寄り添い、葬儀の規模や祭壇の飾り付け、進行などを提案し、最後までサポートする仕事に就いています。悲しみに暮れるご遺族の心の支えとなりつつ、葬儀を成功に導くという役割に、大きなやり甲斐を感じていました。
しかしながら、生来の優しすぎる性格から、会社から命じられている「葬儀のオプションを喪主にすすめる営業活動」が苦手でした。目の前で悲嘆に暮れるご遺族に対して、次々とオプションをすすめ、高額な費用負担を強いることは、まるでご遺族の弱みにつけ込んでいるようで、気が引けてならなかったのです。
当然、彼の営業成績は低迷していました。一方で、社風は比較的穏やかだったため、彼が上司からそのことでことさら厳しく責められたことはありませんでした。しかし、桃山さん自身は「きっとそう思われているのではないか」と過度に懸念し、必要以上に気に病んでいました。
「あの人に迷惑をかけているのではないだろうか」
「自分が過去にしでかした、あの些細なミスがいつまでも気になる」
「この場は、自分さえ我慢すれば丸く収まるはずだ」
彼は、このように自分の中でさまざまな思いを巡らせがちで、そんな葛藤を絶えず抱えている自分自身を好きになれずにいました。

