
社内で「当たり前」とされる言動や慣習が、知らず知らずのうちに従業員の意欲を損ね、組織の信頼を下げているケースは少なくない。組織開発に詳しい沢渡あまね氏は、現場の“景色”を見直すことが、エンゲージメント向上の出発点になると指摘。採用から退職後までを13のプロセスで捉えた「EXジャーニーマップ」を手がかりに、個々の現場から組織全体をどう変えていけるかを具体的に解説する。
EXの鍵を握る「半径5ⅿ以内」の従業員体験
私は、組織開発のミッションに関わる際には、「景色を変えて組織を変える」ことをモットーにしています。
私たちの日々の意識というのは、変わりにくいものです。同じメンバーで同じ仕事をしていると、意図せず内向きになり、メンバーのエンゲージメントも下がり、コンプライアンス的に良くない結果に陥ることも少なくありません。
しかし、そのような組織でも、人と人とのつながり方やワークスタイルといった景色を変えることで、凝り固まった意識を解き、チームマネジメントの仕方や成果の出し方を変えられます。私は全国津々浦々で、そうしたリアルな現場を数多く見てきました。
より良い組織をつくるには、元請け下請けの関係、指示命令関係といった垣根を乗り越え、共に価値創造ができる、良いエンゲージメントを生む景色をつくることが大切です
最近、従業員体験(EX)ということがよく言われますが、従業員エンゲージメントの向上には、より良い従業員体験を皆さんの半径5m以内、すなわちリアルな職場からどうつくって行くかが、鍵となります。
EXの重要性は世界でも日本でも認識され始めていますが、共通のフレームワークというものがありませんでした。
そこで、私と法政大学大学院の石山恒貴教授、ビジネスリサーチラボの伊達洋駆代表取締役と共に、世界初のEXの共通言語、EXジャーニーマップという体系を作りました。
EXジャーニーマップは、採用前から退職後までのEXの全体像を13のプロセスに分け(下図)、それぞれについて半径5m以内の従業員体験も含めて体系化したものです。
その会社を知り、入社してみようと採用候補者になり、その後めでたく入社し、社員となり、異動や昇格、休職といったライフイベントを体験しながら、転職あるいは退職を迎え、転職・退職後も元の組織と良い関係を築いていくという流れを示しています。
これらのプロセスにおいて共通して言えることは、それぞれのプロセスにおける良い体験や悪い体験が、本人あるいは職場全体を良いものにも悪いものにも変えるということです。







