We Are The People 代表取締役 安田雅彦氏(撮影:冨田 望)
人材の多様化が進むにつれて、多くの日本企業でマネジメントの難易度が上がっている。「管理職は罰ゲーム」という声も散見される中、マネジメントにはどのようなアプローチが必要なのだろうか──。こうした疑問に対して「外資系企業のフィードバックの仕方を知り、身に着けることで解決できる」と話すのは、2025年2月に著書『世界標準のフィードバック 部下の「本気」を引き出す外資流マネジメントの教科書』を出版した、We Are The People 代表取締役の安田雅彦氏だ。日本企業と外資系企業ではフィードバックの仕方にどのような違いがあるのか、効果的なフィードバックにはどのような要素が必要なのか、同氏に話を聞いた。
日本では「真の意味のフィードバック」が行われていない
──本書『世界標準のフィードバック』では、安田さんがグッチグループジャパンやジョンソン・エンド・ジョンソン、アストラゼネカ、ラッシュジャパンといった外資系企業の人事に携わってきた経験をもとに「外資系におけるフィードバック」の考え方や実践法について解説しています。著書では、多くの日本企業において「昭和型のフィードバック」が行われていることを指摘していますが、そこにはどのような問題点があるのでしょうか。
安田雅彦氏(以下敬称略) 外資系企業と日本企業で働き、今はコンサルタントとして日本企業を見ている立場から実感しているのは、「ほとんどの日本企業では真の意味でのフィードバックが行われていない」ということです。
フィードバックの本質は「期待されていること」と「実際のパフォーマンス」との間にあるギャップ(差分)を伝えることです。そして、それを部下の成長機会に結びつけることが重要です。
しかし、日本企業のフィードバックは年1回、あるいは半期に1回、評価面談の場を活用したフィードバックがほとんどであり、それすらまともに行われていない会社も多いと感じています。ましてや、日常的なフィードバックはほとんど行われていないのが実情ではないでしょうか。
フィードバックは、年1回や半期に1回では全く足りません。部下に対する期待値と実際のパフォーマンスの差分は、評価のタイミングで突然発生するわけではなく、日々少しずつ発生するものです。よって、年間の勤務日数が240日あるとすれば、240回のフィードバックの機会があるはずです。
ところが、日本企業ではこの日常のフィードバックが全くなされていないため、評価のタイミングで初めてその差分を伝えることになります。部下の立場からすれば、納得できないと感じるのも無理はありません。これでは人材の成長は期待できないでしょう。







