(4)ネタニヤフ首相の“強気の軍事・外交”──最強の同盟関係の結束と強固な自律性の両立

 もう一人、トランプ大統領の盟友とも言えるリーダーがいる。やや特異であるが、いやむしろ特異であるからこそ、イスラエルのネタニヤフ首相のやり方からも大いに学ぶべきだ。

 ネタニヤフ首相は、トランプ大統領との長年にわたる信頼関係を背景に、自国の安全保障上の“国益”を一歩も譲らぬ姿勢を示してきた。

 イラン空爆においても、また、ハマース幹部を狙ったカタールのドーハ空爆においても、必ずしも事前に米国の十分な理解を得ていたわけではない。こうした軍事行動の善悪の判断は置いておくとしても、ネタニヤフ首相の下で、イスラエルの軍事面での大胆な自律性が最大限に発揮されていることは間違いない。

 米国に対して、イスラエルは自らの安全保障アジェンダのプライオリティを示すことに一切のためらいがない。この点では、イスラエルは他の国々と比較しても突出している。この背景にあるのは、特に中東地域において米国を凌駕するインテリジェンス能力と、米国の内外へのユダヤ系ネットワークに基づく強固な政治的影響力である。

 ガザの停戦へのプロセスにみられたように、それはイスラエルの過剰な自信の表れとも言えるが、イスラエルが、米国という最大の同盟国に自らの自律性を示しつつ、同時にその同盟関係の強固な結束を改めて実現するという離れ業をやってのけていることは瞠目に値する。

 日本の外交にとっても、イスラエルの“能動的かつ自律的”な姿勢は、反面教師としての側面も含め大いに参考になろう。持続的な防衛費の拡大や、自衛力の格段の強化といった継続的な日本の政策は、米国に対して「日本が率先して安全保障上の負担を共有している」という強いメッセージとなる。

 この点で日本は、インテリジェンス能力を含め広義の安全保障面で自律性を飛躍的に高める必要がある。戦後長らく続いてきた日米同盟の非対称性を「コストシェア」という受け身の認識から、「リスクシェア」という危機に立ち向かう能動的なポジティブな戦略に転換することによって、日本に対する米国の理解を増大させることになろう。