若者の収入増がマイホーム購入に拍車

 若い世代ほど収入が増える傾向が強まっていることも、20代でのマイホーム購入に拍車をかけている要因かもしれない。

 あらゆる業界で人手不足が深刻化しており、特に若い世代の人材確保競争が激化していることもあり、年配者に比べて若年層の賃金手当に厚みを持たせる傾向が強まっている。

 労務行政研究所の調査によると、2025年度の初任給は【図表4】のようになっている。大学卒は2024年度の23万円台から、2025年度は25万円台に上がり、6.3%のアップだった。大手企業の中には、「初任給30万円以上」を打ち出す企業も登場している。

 厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、全世代の賃金の対前年増加率は3.8%。こうした調査からも、若い世代の収入アップを図って人材を厚くしようとする産業界の狙いが透けて見える。

 その一方、日本では同じ会社に長く勤めて、年齢が上がるほど収入が増える年功賃金制度が続いてきた。最近でこそ、若い世代の賃金を引き上げ、年功賃金から成果主義賃金に移行する動きが強まっているとはいえ、まだまだ長く勤めれば収入が上がっていく仕組みが根強く残っている。

【図表5】でも分かるように、賃金は50代の後半まで増加が続くので、安心して住宅ローンを組むことができる。

 つまり、住宅ローンを組んでおけば、若いうちは苦労しても、いずれ収入が増えて生活は楽になるはずという計算が成り立つ。だからこそ多少無理をしても住宅ローンを組んでマイホームを買っておこうとする若い世代が多いわけだ。

 しかも、このところ住宅価格の高騰が続いているので、何らかの事情でローン返済が難しくなっても、売却すれば売却益が出る可能性が高く、ローン残高を一括返済してやり直すことができるのではないか──という見通しが立つのも安心材料になっているのだろう。

 ただ一方で、価格の高騰で住宅ローンの借入額が増えると、負債を多く抱えることになり、それだけリスクが大きくなることを忘れてはならない。万一の病気、ケガ、失業などの事態になってもある程度対応できるような蓄えを持っておくことが重要だ。