マンションや一戸建ての利便性を謳う広告には落とし穴も(写真はイメージ/写真AC)
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 マンションは最寄り駅からの距離が、生活利便性を左右するだけでなく、資産価値にも大きく影響してくる。しかし、不動産広告に掲載されている物件には、最寄り駅からの徒歩時間や都心などへの所要時間が、明らかに短く表記されている場合がある。一体どんな決まりがあり、どんな落とし穴があるのか。住宅ジャーナリストの山下和之氏が解説する。

首都圏にあるマンションは最寄り駅から「徒歩5分」が多い

「マンションは立地がすべて」と言われるが、どのエリアのどの位置にあるかが資産価値にも大きく影響する。中でも、最寄り駅からの徒歩時間が短いほど有利で、長くなるほど人気が低下し、価格も下がる傾向にある。特に首都圏では「徒歩5分」が資産価値の分かれ目と言っても過言ではない。

 別掲のグラフにあるように、東京カンテイが2024年に新規分譲された首都圏の新築マンションと一戸建て住宅を最寄り駅からの徒歩時間(バス便物件を除いて25分まで集計)を調べたところ、5分が3468戸と最も多く、5分以内の合計は1万700戸で、全体(2万6653戸)の40.1%を占めている。6分から10分までは2000戸前後を維持しているが、10分を超えると格段に減少する。徒歩5分以内がいかに重要であるかが分かる。

 それに対して、戸建住宅は5分までは極めて少なく、全体の5.5%に過ぎない。多いのは10分以上で、15分が3995戸と最も多くなっている。20分以上の物件もあり、戸建住宅はマンションほど徒歩時間が重要視されていないことがうかがえる。

 だが、数多くのマンションを見てきた人の中には、徒歩5分以内の駅近マンションがそんなにあるのだろうかと疑問に感じる人がいるかもしれない。「5分以内の物件はせいぜい2割か3割程度ではないか」というわけだ。

 それもそのはず。不動産広告における徒歩時間の表記には、さまざまな抜け道があり、実感値とはかなり違ってしまうことがあるのだ。