住みたい街の常連、東京・吉祥寺駅北口駅前の風景
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 爆騰する東京の新築マンションの価格──。

「誰が買うのだ」という価格帯にわななき、「ならば中古マンションで」となったところで中古価格も爆騰中。次に視野に入るのは、築40年以上の「築古マンション」である。値上がりが激しい中古マンションの中でも、築古マンションの価格は相対的に安い。

 国土交通省の推計で、全国に148万戸あると言われる築古マンションは、果たしてお買い得なのか。建物と住民の「高齢化」でヤバイことになってはいないか。住民のリアルな声を聞いてみよう。(若月 澪子:フリーライター)

「住みたい街1位」の築古マンション

「見栄えのよい築古マンションほど、気を付けたほうがいい。何が落とし穴になるかわかりませんから」

 こう話すのは都内在住の会社員Aさん(40代後半)。Aさんが「住みたいまちランキング」の常連でもある東京・吉祥寺の築古マンションを購入したのは、2010年代前半のことである。

 そこは築40年以上の、いわゆる「ヴィンテージマンション」と呼ばれる物件だ。ただ築年数を重ねていてもメンテナンスは行き届いており、趣のある佇まい。武蔵野の自然を堪能できる立地にあり、しかも「駅チカ」だ。

 購入時の価格は約5700万円。当時は、リーマンショックの影響がまだ残り、中古マンション価格も比較的落ち着いていたころである。

 Aさんが購入した部屋は、間取りが約90m2で3LDKのクローゼット付き。壁も床も水回りも、新品同様にリフォームされていた。家族で暮らすには快適な環境だとAさんは思った。
 
「最高の物件でした。価格も立地も気に入りました。長く住むつもりで購入したんです」

 ところが何年かの後、Aさんはこの築古マンションを売却した。なぜ、Aさんはこの「最高の物件」を手放すことになったのか。