“未来の国宝” 菊池容斎作の巨大絵画

 静嘉堂が「国宝に指定されるに値する」と自信をもって送り出す“未来の国宝”も見逃せない。とくに菊池容斎による巨大絵画二幅(前期展示:10/4~11/9、後期は《阿房宮図》を展示)に圧倒される。容斎は狩野派、円山四条派、土佐派などに学び、狩野探幽や円山応挙の画風を慕った幕末・明治初期の日本画家。復古思想に影響を受け、歴史画を数多く描いている。

 展示されている二幅はともに中国の故事を題材にした絵画で、どちらも奇妙な味わいをもつ。《馮昭儀当逸熊図》は、前漢の元帝を守るべく、勇気ある女性・馮媛(馮昭儀)が熊の前に立ちはだかる場面を描いたもの。熊がなぎ払い散らばる牡丹の花や、驚きや恐怖の表情を浮かべる後宮の女性たちが丁寧に描き込まれ、容斎の画力の高さを感じ取ることができる。

菊池容斎《馮昭儀当逸熊図》天保12年(1841)静嘉堂文庫美術館蔵 展示期間:前期(〜11/9)

 もう一点の《呂后斬戚夫人図》は、なんとも血なまぐさい。主役は中国三大悪女に数えられる呂后。彼女は前漢の高祖劉邦の正妻で、劉邦が没すると皇太后となって最高権力を手に入れた。呂后は自らの子の地位を守るべく、劉邦が生前寵愛した戚夫人の手足を切断し、目をえぐり、厠に投げ込み、ヒトブタと呼ばせたという。本作では戚夫人が手足を斬られる様子を、呂后が冷たい眼差しで見物する場面が描かれている。

菊池容斎《呂后斬戚夫人図》天保14年(1843)静嘉堂文庫美術館蔵 展示期間:前期(〜11/9)

 静嘉堂ではこの《呂后斬戚夫人図》・《馮昭儀当逸熊図》をモチーフに、オリジナルグッズ「等身大ブランケット 菊池容斎」を制作。大ヒット中の「ほぼ実寸の《曜変天目》ぬいぐるみ」に続く、実物大グッズの第2弾となる。価格は3万3000円(受注生産)。はたして、こちらも大ヒットとなるか。

「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念 修理後大公開! 静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」
会期:開催中~2025年12月21日(日)前期:〜11月9日(日) 後期:11月11日(火)〜12月21日(日) ※前後期でほぼ全ての作品入れ替え
会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
開館時間:10:00~17:00 ※第4水曜日(10月22日、11月26日)は〜20:00、12月19日(金)、20日(土)は〜19:00) ※入館は閉館の30分前まで ※毎週木曜日はトークフリーデー
休館日:月曜日(ただし11月3日、24日は開館)、11月14日(火)、25日(火)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://www.seikado.or.jp/