『やさしいライオン』

『やさしいライオン』は柳瀬嵩の作品だ。昭和42年(1967)に文化放送のラジオドラマとして放送され、昭和44年(1969)に『キンダーおはなしえほん』の5月号として刊行もされた、柳瀬嵩が大切にしている物語である。

 あらすじは、以下の通りである。

 とある動物園では、母を亡くしたライオンの赤ちゃん・ブルブルが、子どもを亡くした母犬・ムクムクに育てられていた。

 2匹は実の親子のように仲良く暮らしていたが、ブルブルが成長すると、離れ離れになってしまう。

 ブルブルがよその動物園へ移された後に、サーカス団に売られたからだ。

 数年後のある晩、ブルブルの耳に、母犬・ムクムクが歌ってくれた子守歌が聞こえてくる。

 ブルブルは檻を破って町へ飛び出し、母犬を探し回った。

 ようやく老いて死にかけた母犬を見つけると、ブルブルを追ってきた、ライフルを手にした警官隊の隊長が「撃て」と命令した。

 短編アニメーションとなった『やさしいライオン』は、昭和45年(1970)に公開され、同年の第24回毎日映画コンクール・第8回大藤信郎賞、年第12回児童福祉文化奨励賞を授与された。

 以後、柳瀬嵩はだんだん子ども向けの絵本の仕事が増えていき、反対に手塚治虫はアダルト向けの劇画の方向に進んだ。

 2人は交叉し、逆になったのだという(以上、やなせたかし『アンパンマンの遺書』)。