手塚治虫は『アンパンマン』の放送を観られなかった?

 ドラマでは、手嶌治虫がアニメ『それいけ!アンパンマン』の初回放送を観て、「おめでとう」と柳井嵩を祝福するシーンが描かれた。

 だが、手塚治虫は『それいけ!アンパンマン』を観られなかったかもしれない。

 手塚治虫は平成元年(1989)2月9日、胃がんのため、この世を去っている。享年60であった。

『それいけ!アンパンマン』の初回放送は、昭和63年(1988)10月3日であるが、手塚治虫オフィシャルサイトの年譜には、この日、彼が「再入院」したと記されているのだ。

 柳瀬嵩は自伝『アンパンマンの遺書』のなかで手塚治虫の死に触れ、「不滅の巨人は昭和という時代を追うように、平成の夜明けの闇の中に消えていった」とし、「アンパンマンは鉄腕アトムとすれ違った」と称している。

 そう、アンパンマンと鉄腕アトムは、柳瀬嵩と手塚治虫は、確かにすれ違ったのだ。