JARI城里テストコース20周年記念式典で、高速周回路改修工事完成記念で関係者一同による記念写真(写真:JARI)
自動車のテストコースでどのようなことが行われているのか、一般的にはあまり知られていない。自動車メーカーが保有する自社コース以外に、大規模なコースが日本に存在することもあまり知られていないはずだ。そんな大規模テストコースが、365日・24時間体制で運用されていて、ほぼフル稼働していると聞くと、驚く人が少なくないのではないだろうか。その実情について、自動車業界関係者らに話を聞いた。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
一般財団法人日本自動車研究所(略称JARI:呼称ジャリ)が10月1日、「城里テストセンター開業20周年記念式典」を行った。
冒頭、JARI理事長でトヨタ副社長の中嶋裕樹氏は「自動車業界のモノサシ作り」とJARIの存在意義を強調した。
記念式典で挨拶する、JARI理事長でトヨタ副社長の中嶋裕樹氏(写真:筆者撮影)
これは産学官連携によって、JARIが日本における自動車の試験法などを確立することを示している。そもそもJARIは自動車メーカーや自動車部品メーカーが共同出資し、国や自治体等と協力して生まれたという歴史があるからだ。
そうした自動車試験のあり方も時代と共に変化しており、また今や自動車メーカー各社が自社で大型テストコースを構えるのが当たり前になっている時代でもある。
それでもなぜ、JARIが必要なのか?
テストコースはT型フォードの時代に誕生
JARIについての話を進める前に、まずは自動車テストコースの歴史を振り返ってみたい。
JARI代表理事で研究所長の鎌田実氏が「JARIの歩み」を説明する様子(写真:JARI)
自動車が生まれたのは1800年代後半で、1900年代に入ると欧米の富裕層向けの乗用車やタクシーなどで徐々に需要が増加した。
これにあわせて、欧米では自動車レース(今でいうモータースポーツ)が始まった。参加したのは、自社製品の走行テストや宣伝活動をするための自動車製造者と、スピードやスリルを趣味として味わいたい富裕層だった。
だが当時は、自動車レースの専用コースはなく、一般道を一時的に閉鎖したり、人里離れた山間部や沿岸部などでレースが開催されたりしていた。
1900年初頭になるとアメリカでインディアナ州インディアナポリスに大規模なレース専用の楕円形コース(オーバルコース)が完成している。
その後、T型フォードの登場により自動車大量生産の時代に入ると、欧米自動車メーカー各社は自動車生産工場に隣接するエリアなどに、新車開発や製造後のチェック走行のために自前テストコースを建設するようになっていく。